日時 | 平成29年2月19日から2月22日まで 3日間 |
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場所 | 2月20・21日 新大阪丸ビル別館 2月22日 アクロス福岡 |
用件 | 2月20・21日 人口減少時代の自治体財政 2月22日 議員活動マスター講座 に参加のため |
人口減少時代の自治体財政
立命館大学 政策科学部 教授 森 裕之 氏
自治体財政について ~地方財政制度~
1 地方財政計画との関係 ~財政全体から見た地方財政~
①内政分野への歳出(民生費、学校教育費、国土開発費、衛生費など)の 大部分は地方財政が賄っている ②地方財政の仕組み(2014年度における国・地方間の財源配分) ・国民の租税総額93.9兆円:国税57.8兆円(61.6%)、地方税36兆円(38.4%) ・歳出ベース:国70兆円(421.7%)、地方97.8兆円(58.3%) ・税と歳出の配分比率のねじれは先進国中最大 → 国のさせたいことと、 地方のしたいことのねじれ2 まち・ひと・しごと創生基本方針
(1)時代に合った地域づくり ①まち・ひと・しごと創生基本方針や骨太の方針で繰り返し要求されている ②内容 稼げるまちづくり、立地適正化計画(コンパクトシティ)、 地域公共交通網形成計画、連携中枢都市圏、定住自立圏、 公共施設等総合管理計画(公共施設の集 約化・複合化・利活用)、小さな拠点の形成 ③財政支援(2017年度) ・まち・ひと・しごと創生事業費 1兆円 ・公共施設等適正管理推進事業費 3,500億円(前年度比+1,500憶円)
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1 財政指標の見方と議論のポイント
(1)決算カード ①主な財政指標の経年変化 時系列に現れた変化の背景を探る(経済情勢、財政政策、制度改革など) ②財政指標の内訳を探る(経常収支比率など) ③目的別歳出と性質別歳出をクロス分析する ④類似団体や近隣自治体との比較する (2)歳入 ①一般財源・特定財源、地方税、国庫支出金、地方債についての説明 ②臨時財政対策債 ・実質的な赤字地方債 ・H26年度の地方債発行額の47%が臨時財政対策債 年々増額、財政規律は崩壊状態、使わなくて済むならば 発行しないのが賢明 (3)歳出 ①目的別経費、性質別経費についての説明 ②公共事業費が減り、福祉費が増えた ③大規模自治体ほど民生費(福祉)の支出割合が大きい ④効果のチェック ・需要と支出のバランス:需要が満たされているか、需要は適切か ・現在と将来の一般財源の負担の大きさ ・住民や地元企業との協働できているか (4)経常収支比率 ①数値が高いほど財政が硬直化している ②成長期は80%以下が望ましかったが、新規建設量が減った現在は80%を 超えても大きな問題ではない2 財政健全化法と各種指標
(1)4つの判断比率 ①実質赤字比率(旧制度はこの指標のみ):普通会計の実質赤字の 標準財政規模に対する比率 ②連結実質赤字比率:全会計の実質赤字等の標準財政規模に対する比率 ③実質公債費比率:地方債元利償還金の標準財政規模に対する比率 ④将来負担比率:公営企業、出資法人等を含めた実質的負債の 標準財政規模に対する比率 ⑤上記いずれかが基準以上の場合、財政健全化計画を策定し議会と国に報告 (2)分析事例(弘前市2014年度決算) ①性質別歳出の構成比を類似団体と比較 ②人件費、物件費(委託費が含まれる)の比率が低い → かなり人を 減らしている ③補助費の比率が高い → 事務組合への補助費が大きい3 これからの地方議員がおさえるべき勘所
①国は地方への仕送りを減らすが、地方創生に取り組む自治体には財政支援 ・政府の動きと自治体予算の関係をチェック ・地方交付税、国庫支出金、地方債などと施策との関連をチェック ・地方創生への誘導を上手に利用する ②地元企業や地域団体の社会経済力を引き出す ③自治体間連携を強めて行財政改革を進める ④公共施設の再編問題への対応(地方創生の中心)
国土強靭化政策と公共事業
1 地域の公共施設・インフラの現況
(1)事業主体別行政投資額の推移 ①国2割、都道府県4割(学校と公営住宅の比率が多い)、 市町村4割(うち、小中学校が4割を占める) ②学校と公営住宅が再編・統合のターゲットになる (2)社会資本(道路、港湾、空港、公共住宅、下水道、公園、治水、海岸)の 維持管理・更新費の将来推計(国土交通省2010年度) ①2037年度には維持管理・更新費が投資総額を上回る(新設は不可能) ②2060年度までの50年間に必要な更新費190兆円のうち16%約30兆円の 更新ができない ③インフラは更新せざるを得ないので、公共施設(箱もの)を 統廃合するしかない (3)老朽化と事故 ①水道 ・日本で年間25,000件の事故(一日平均70件) ・水道管破裂による大規模事故も多い ②学校 ・市町村が所有管理する公共施設の37%が小中学校 ・ほぼすべてが改修の必要がある ・タイル、窓などの脱落事故が2011年度だけで14,000件(全国の 公立小中学校は30,000校なので1年間に2校に1校で事故が発生した計算) (4)公共事業の基本的財政スキーム ①地方公共事業の建設は国庫支出金、地方債、一般財源の組み合わせで 行われるが維持管理や補修は自治体の一般財源で行う ②自治体の整備してきた社会資本の維持補修は自治体が担う2 国土強靭化政策の2つの課題
(1)国土強靭化基本計画 ①被害最小化、迅速な復旧復興、国の経済成長の一翼 ②東京一極集中からの脱却 ③施策の重点化、既存社会資本の有効活用等による費用縮減、民間資金の 積極活用 ④国土強靭化地域計画を定めることができる (2)国土強靭化地域計画と公共施設 地域計画と公共施設等総合管理計画は連携して整合性を 持たなくてはならない (3)課題 ①国民の需要の変化や社会資本の老朽化等を踏まえるとともに、持続的な 実施に配慮して施策の重点化を図ること ②限られた資金を最大限に活用するため、PPP(パブリック・プライベート・ パートナーシップ)やPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ) による民間資金の積極的活用を図ること ・しかし、PFIの経費節減効果は有効な検証が行われていない ・最近は、経費削減の手段としてのPFIは採用されなくなっている(民への 解放が目的となっている)3 強まる行財政誘導と公共施設等総合管理計画
(1)行財政誘導 ①2014年 日本創成会議の「消滅可能性都市」以降の地方自治法改正、 骨太の方針日本再興計画、国土強靭化基本計画、まち・ひと・しごと 創生本部、国土のグランドデザイン2050で示されたこと ・都市間連携 ・立地適正化計画(居住地域や都市機能の集約化) ・東京一極集中是正 ・インフラ長寿命化 ・コンパクトシティ、コンパクトビレッジ(小さな拠点)、ネットワーク ・PPP、PFI推進 ・公共施設等総合管理計画 ②立地適正化計画 ・人口密度が高いほど一人あたりの財政コストは低い ・居住誘導区域:従来の都市計画における市街化区域を縮小 ・都市機能誘導区域:福祉、医療、商業等の集積 ・国土強靭化政策との連携:財政支援で計画作成自治体と未作成自治体を 差別化(誘導区域の防災対策には国の支援) ・公共施設等総合管理計画との連携:管理計画により学校敷地の土地を 供給し、適正化計画の誘導区域として活用する (例:学校敷地を売却もしくは公営住宅化して居住誘導) ③公共施設等総合管理計画 ・老朽化や利用の状況の把握 ・人口推移見通しの把握・分析 ・財政収支見込(維持管理、更新等の費用も含む) ・財政負担の軽減、平準化に向けた数値目標の設定 ・事業推進のための財政措置(補助金や事業債)がさらに拡大される 可能性 ・公共施設縮減によるコスト削減
㈱地方議会総合研究所 所長 廣瀬 和彦 氏
議員の役割と議員活動の基本
1 問題点
1 議員間討議が少ない 2 議会事務局の人員不足 3 住民から遠い存在になっている 4 不適切な口利き 5 会派が政策手段ではなくポスト獲得集団になっている 6 議会報告会は住民ニーズを満たしていない。意見交換会(住民の意見を 聞いてほしい)がニーズ2 議員の権限
(1) 会議内の権利 1 動議の提出権(口頭で求める) 2 表決権:無記名評決をもっと活用すべき 3 議長選挙等における選挙権 4 表決に際しての投票方法等の要求権 5 異議申し立て権 6 事件等の撤回権(一事不再議を回避できる) (2) 会議外の権利 1 臨時会の召集請求権 2 本会議の開議請求権(当日の開議のみ) 3 委員会の召集請求権(当日に限らず) 4 議案の提出権:団体意思決定議案(条例・予算)と 機関意思決定議案(決議) 5 議員としての資格を有しているか等の要求権 6 侮辱者に対する処分請求権 7 請願の紹介権 8 条例による議員報酬、費用弁償、期末手当の受給権3 議会の権限
(1) 議決権 1 議会の権限が及ぶ範囲は基本的なもの又は重要なものの決定に限られている 地方公共団体の全ての意思決定が委ねられてはいない 2 地方自治法96条2項(追加議決権) 議会で議決する事件を定めることができる(法定受託事務は対象外) (2) 選挙権 1 指名推選 特定の者が当選人となることが予測され、議員の中から異議がなく、 投票を行った場合と同じ結果が得られると認められる場合に当選人と すべきものを指名し、そのものを当選人と定める手続き 2 議長選挙での立候補制(従来は会派間で事前調整し指名推選) 全国の市議会のうち4割の議会が立候補制 (3) 監視権:執行機関を監視し牽制する権限 1 報告及び書類受理権、検閲検査権、監査請求権 ・報告及び書類受理権(議会の議決権や諸権限の適切な行使を 担保するため)長から提出される報告や資料に対する質疑は可能 ・検閲検査権(地方自治法98条) 議会は地方公共団体の事務に関する書類及び計算書を請求し、事務の 管理、議決の執行及び出納を検査することができる → 条例や予算審議に反映させる(帯広市議会がよく使う手法) ・監査請求権 監査委員に監査請求する権限がある 議会及び議員は執行機関に対する一般的な資料要求権はない 2 調査権 ・監視権の中で最も実効性がある ・地方公共団体の事務に関し、関係人の出頭、証言、記録の提出を 請求できる ・明確な結論が出ない場合も多い 3 承認権 執行機関によって既に執行された行為(専決処分)について承認する権限 4 同意権 副市長選任などの人事案件や長の法定期日前退職など 5 不信任議決権 最も強力な監視権 (4) 意見表明権:一定の事項について議会としての意思や見解を表明する権限 ・意見提出権 地方公共団体の公益に関する事件についての意見書を国会や行政庁に 提出できる 国会や行政庁は意見書受理の義務は負うが、その意見には拘束されない ・諮問答申権 執行機関が一定の行為を行うに当たって、議会に諮問することを 義務づけられている案件への答申 ・請願受理権 (5) 自律権(議会の内部的事項を決定し、処理する権限) 議員の資格決定権や議会の自主解散権など
質問・質疑の活用と議員としての発言のあり方
1 質問
(1) 種類 1 代表質問:所属政党又は会派を代表して行う質問 2 一般質問:個々の議員が行う質問 3 緊急質問:突発的に発生した事態に対する緊急性を有する質問 4 関連質問:質問議員以外の議員が行う (反問権は必要なし) (2)一般質問 ①質問通告書 ・質問者の数の調整(議会運営委員会にて重複質問への対応) ・質問者の順序の調整 ・執行機関の答弁の準備 ②執行機関による事前聞き取り ・議論をかみ合わせるためにある程度必要 ・議員は議長を通して答弁要旨をもらわないとバランスを欠く ③質問方法(一問一答方式が望ましい) ・一括質問、一括答弁方式 議事が円滑に進む 執行機関は答弁の準備がしやすい 質問と答弁の間があき、分かりづらい 演説調になりやすい 答弁漏れの可能性が高い ・一問一答方式 傍聴者にも分かりやすい 論点、争点が明確になる 答弁漏れの可能性が低い 同じ質問が繰り返される可能性がある 執行機関は答弁の負担が大きい 質問数は減る 議場は対面式が望ましい2 質疑(議題となった案件についての疑問点を提出者に聞くこと)
1 意見は言えない 2 定例会・臨時会を問わず行うことが可能 議場の説明のなかで、長岡市議会の議場も例示されたが、開会中にブラインドを 下ろしていることを講師は批判した