日時 | 平成28年2月8日から平成28年2月9日まで2日間 |
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場所 | 8日 みなとみんなのスタジオ(東京都) 9日 参議院議員会館(東京都) |
用件 | 8日 地方自治活性化研究会 特別講演会 に参加のため 9日 原発事故の責任を考える学習会 に参加のため |
8日 「官僚と政治の関係」
政策コンサルティング会社社長(元経済産業省官僚) 原 英史 氏
1 官僚による公共政策分野の独占(対案がどこからも出てこない)
(1)政治に対しては官僚主導、地方に対しては中央主権、民間に対しては 官僚統制(規制) (2)公共政策は政治との関係で歪みやすくなっている ①歪む原因の一つは官僚機構と政治の構造なので、改革が必要 ・例えば、甘利前大臣はURに対する口利き疑惑が指摘されている が、同じような事件は数多くある。つまり、政・官ともに好都合 なもたれ合い構造がある。
2 総理が方針表明しても改革は進まない
(1)小泉総理2004年9月「混合診療解禁の年内決定を指示」 ①10年以上を経て患者申出療養制度(2015年) (2)安倍総理2014年ダボス会議で岩盤規制改革を2年で達成と明言 ①農業分野:農協改革などは実施されたが企業参入の問題が未実施 ②医療分野:患者申出療養は実施されたが企業参入の問題が未実施 ③労働分野:労働時間規制、解雇ルールが未実施 ④外国人就労:一部分野での就労が可能になったのみ (3)規制改革が進まない要因 ①総理の諮問機関である「規制改革会議」2009年の意見書 「族議員と言われる政治家、規制と天下り先を温存したい官僚、 既得権を持つ事業者や団体が鉄のトライアングルとして結託 し、改革を阻んできた」 ②特定利権を持つ事業者や団体は国民の中では極少数であるが、その 他の大多数の一般国民と利益が対立しやすい ③メディアにも記者クラブという特定利権が存在し、鉄のトライアン グルと連動している ④利権の温存は世界共通の現象だが、アメリカでは事業者や団体が主 導し、日本では官僚が主導している。
3 政策の歪み改革
(1)個別政策分野の改革:岩盤規制改革、公共事業改革など 構造的改革:官僚機構改革、地方分権改革、選挙制度改革など (2)官僚機構の問題 ①意識 ・官僚の特殊性に対する幻想:全体の奉仕者で公正・中立だと思 っている。また、自己の無謬性(間違いがない)を信じている ので、間違いを認めず微修正で対応することが多く、逆に傷口 を広げてしまう。 ②人事システム ・給与・手当の厚遇批判:仕事をする人しない人が同じ給与であ ることが問題。適正評価を導入し年功序列の打破が必要。 ・総務省「人事評価に関する検討会」報告書(2014年):国家公 務員全体の評価で、「一般職員能力評価 S(優)5.8%、A53.8 %、B39.8%、C0.5%、D(劣)0.1%」幹部評価も同傾向。差 がつく評価になっていない。 ・天下り:年功序列の終着点で省庁人事当局によるあっせん。結 果として、外郭団体などの増殖と延命、省庁への忠誠心 ③行政運営システム ・国民の代表たる大臣は、官僚から見たら一日警察署長のような もの。本物の署長は事務次官なので、官僚は事務次官を見て仕 事をする。
9日 「漂流する責任」 ~福島第1原発事故の前年に何があったか~
共同通信 科学部 記者 鎮目 宰司 氏
1 衝撃の告白 小林調書(政府事故調)
2010年7月頃、原子力安全・保安院の耐震安全審査室長だった小林氏 は3号機の安全性を原子力安全委員会で審議するよう訴えたが、野口・ 原子力発電安全審査課長は「その件は安全委と手を握っている(安全委 はチェックしないことと思われる)から、余計なことを言うな」とし、 人事担当の課長からも「クビになるよ」と警告を受けた。
2 背景
2006年 原発耐震指針の改定で、耐震バックチェック(再評価)開始 2007年 中越沖地震があり、チェックは各原発で1基となる 2008年 東電が5号機中間報告を保安院に提出 2009年2月 地元4町が3号機のプルサーマル議論再開を県に要請(プ ルサーマル助成金が減らされる状況が影響か) 2009年6月 5号機の審査で貞観津波(過去の巨大津波)が指摘される も後回しとなる(貞観津波の評価は最終報告書に先送り) 2009年7月 佐藤知事がプルサーマル議論の再開を表明 保安院が5号機バックチェック審査の中間報告書を出す 2010年2月 知事が3号機プルサーマルの条件付き(3号機の耐震安全 性、老朽化対策、燃料の健全性の3要件)受入れを表明 当時、東電は福島県に3号機でのプルサーマル実施を求めていた。県は 経産省に3号機の耐震安全性を特別に確認してほしいと伝えていた。 2010年3月 県担当者が資源エネルギー庁担当者と面談し「津波評価抜 き、安全委のチェック抜き」を、あ・うんの呼吸で合意
3 一体 何があったのか
(1)新たな知見 ①「津波堆積物調査にもとづく地震発生履歴に関する研究」(地震調 査研究推進本部) 2007年と2008年に常磐海岸地域における、869年貞観津波イベ ントを確認 ②「平安の人々が見た巨大津波を再現する」(産業技術総合研究所) 巨大津波の再来間隔は、およそ450~800年 (2)エネ庁 ①2010.4月 長官が直嶋大臣と面談 長官「安全委の評価が必要かを知事に確認すると、『やってくれ』 となるので、知事まで上げるのは得策でない。大臣の指示が あれば作業を開始する」 大臣「そうしようか」 経産省は保安院に、5号機で確認済みだがもう一度3号機で耐震 安全性チェックをするよう求めた。 ②安全委を関与させない理由 ・原発定期検査の関係で、燃料装荷は2010.8月を逃すと次は1 年後になる(東電の要求に間に合わない) ・時間が限定されているため、作業は省内で完結したい(内閣府 の安全委が関わると時間が読めない。保安院は融通がきく) ・県の要請を受けたのは経産省で安全委ではない (3)原子力安全・保安院 ①森山 審議官 ・「保安院は他のサイトへの影響を懸念して反対だったが、大臣の 指示ならやむを得ない」 ・審議官から小林室長らへのメール(2010.3月)「3号機の耐震バ ックチェックでは、貞観地震の津波評価が最大の不確定要素であ る旨を院長、次長に話しておきました。バックチェック評価をや れと言われても何が起こるか分からないと伝えておいた」 ②名倉 審査官 「審議官からのメールを見た時、福島担当の自分が評価しなけれ ばならないとはすぐに分かったが、他の仕事もあったのでやりた くなかった。小林室長とも『やりたくないな』という話をした。」 ③小林 室長 ・「私としては3号機の評価作業をやるのであれば、貞観津波をし っかり議論しなければならないと思っていた」 ・「5号機の評価作業以降に得られた貞観津波の知見に関する議論 が、完全に抜け落ちた状態で審議が進んでいった」 (4)東京電力 吉田 原子力設備管理部長 ・「無理やりやれという勢力があるわけですよ。立地地域部とい うか、はっきり言うと、地元の意向でずっと来ている連中です」 ・「我々技術屋からすると、急に降って湧いたようにプルサーマ ルの話ですぐに動きそうだという話を2月頃に受けている」 ・「保安院とエネ庁の中で、やるだの、やらないだの、くだらな いことをやっていたんです。あの馬鹿な官僚どもがね」
4 心当たりがない
(1)角田 原子力安全委員会 審査指針課長への取材 Q 手を握るという内容は? A まったく心当たりがない Q 貞観地震については? A 恥ずかしながら、3.11後に初めて知った Q 事故調の聴取は? A ない (2)内堀 福島県副知事(現知事)への質問 ・「プルサーマルの技術的3条件の取り扱いについて、経産省の方 と私は具体的なやり取りを一切行っていない」 ・「県担当者とエネ庁担当者とのやり取りについて、報告を受けた かどうか、記憶は定かでない」 (3)小山 福島県原子力安全対策課長(当時の県の担当者)への取材 Q 副知事に(エネ庁とのやり取りを)報告していないはずがない でしょう? A そういうことを今になって取材に答える必要はないと思うが… いや、それは……副知事に上がるのは自然です
5 学ぶべきこと
・津波対策を取る時間はあった ・規制官庁は原子力規制委員会に変わったが、推進官庁、立地自治体、 事業者は変わっていない → 大丈夫か ・原子力規制委員会の独立は保たれるのか