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PARC自由学校 2007年講座 に参加

PARC自由学校 2007年講座 に参加

日時平成19年10月22日
場所PARC自由学校(東京都)
用件PARC自由学校 2007年講座 に参加

概要

「定常型社会=持続可能な福祉社会」の可能性

千葉大学教授 広井 良典 氏

1 はじめに

①現在の日本の閉塞状況
・経済成長に代わる価値の喪失
・目指すべき社会モデルが見えない(政党もモデルを示していない)
②二つの対立軸
・第一の対立軸(富の分配をめぐる対立):大きな政府VS小さな政府
・第二の対立軸(富の大きさをめぐる対立):成長志向VS環境(定常)志向
③持続可能な福祉社会(個人の生活保障や分配の公正が実現されつつ、それが環境・資源制約とも両立しながら長期にわたって存続できる社会)のモデルを模索する時期

2 これからの社会保障

①これまでの日本の社会保障
 高い経済成長と需要拡大を前提とし、新卒を新規成長分野に吸収しつつ、産業部門内部の再分配(終身雇用、公共事業、農業補助金、中小企業助成)で調整:「成長が全てを解決する」との発想&生産部門を通じた生活保障と再分配
②これからの日本の社会保障
・これまでの社会保障が弱体化 → 新しい社会保障の強化が必要
・低成長時代において、あらゆる分野で公的な社会保障を行うのは無理
③医療・福祉重点型の社会保障
・医療福祉:リスクの予測困難かつ個人差が大きい。日本の患者自己負担は先進諸国の中で既に最も高い水準 → 公的保障の必要大
・年金:老後の生活費であり、予測でき個人差も大きい。現状は金額の格差が大きい → 厚めの基礎年金中心のものに再編
④社会保障をめぐる新しい課題と方向
・「人生前半の社会保障」の重要性:若年者の失業率大、教育の不平等
・「心理的ケアに関する社会保障」の充実:失業、自殺予防、子供・若者関係、医療
⑤基本理念:人生の様々な段階においての「機会の平等」を保障
⑥財源
・消費税:ヨーロッパ並み(15%以上)の水準は不可避
・相続税:生まれた時点での平等を保障(格差の累積・固定化を制限)
・環境税:ヨーロッパのエコ税制改革(環境税を導入し、税収の一部を社会保障にあて、年金保険料や企業の社会保険料を下げる)

3 「定常型社会=持続可能な福祉社会」のビジョン ~豊かさの問い直し~

①定常型社会における消費と労働
i 時間の消費が中心となる時代
・物の消費 → エネルギー消費 → 情報(デザインやブランド)の消費 → 時間の消費
・余暇、生涯学習
・コミュニティ、自然、スピリチュアリティがキーワード
ii 労働時間と失業問題
・日本の超過労働(週50時間以上、2000年ILO調査)は世界トップクラス
・生産性が最高に上がった社会においては多くの人が失業する。また、人々が働けば働くほど失業が増える → 生産性の上昇分を労働時間削減で対応する。労働時間減少分をコミュニティへ再配分する
②定常型社会の特徴
・分権型社会
・コミュニティや自然やスピリチュアリティ等に関わる人間の高次欲求の領域が展開する
・新しいコミュニティの浮上

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