日時 | 平成18年9月9日 |
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場所 | 全水道会館(東京都) |
用件 | シンポジウム どうする日本の化学物質管理 ―市民からの提案― に参加 |
これからの化学物質管理の方向
横浜国立大学教授 浦野紘平 氏
1 有害化学物質の種類
①天然物、②合成化学物質、③非意図的生成物に分けられ、③と②のうちの工業薬品と農薬では法律の対応が不十分である
2 科学物質管理に関する法律
たくさんあるが、EUを中心に管理が進歩しているので、それに合わせていく必要がある
3 従来の化学物質による健康被害リスクの評価基準
(1)発がんリスク:対象化学物質を一生涯摂取し続けた場合に発がんする確率による評価
①1万人に1人・・・安全とみなせないので直ちに対策をとる
②10万人に1人・・・実質的に安全とみなし、基準値として対策をとる
③100万人に1人・・・最終的な目標とする
(2)内臓・神経障害等:大部分の人に悪影響が出ないとみなせる1日あたりの摂取量で評価する
(3)免疫障害リスク:国際的に認められた定量的評価基準はない
(4)生殖障害リスク:国際的に認められた定量的評価基準はない
4 従来の定量的(確率論的)リスク評価の問題点
①定量的評価に必要なデータが決定的に欠けていることが多い
②必要なデータを得るには、莫大な経費と時間を要するので、進行している環境リスクの低減に間に合わない
③計算に多くの仮定を用いているので、計算結果の不確実性が高い
④不確実(安全)係数などの選択が少数の専門家か行政官が決めてしまう
5 環境リスク管理のための予防原則
(1)1992年国連環境開発会議の「リオ宣言」
環境を守るために、各国は予防的アプローチを採用する。重大な損害の脅威がある場合、十分な科学的根拠がないことを理由に環境悪化防止策を先延ばししてはならない
(2)1998年ウィングスプレッド宣言
・既存の環境規制や決定方法では環境を正しく保護できない
・因果関係が科学的に完全に立証されていなくても予防措置を講ずる
・因果関係の立証責任は行為の推進者が負うべきである
6 予防的管理のための多様な測定・評価方法
・法律で規制されている化学物質は100種類程度
・日本国内で使われている化学物質は約8万種類
・化学物質全部を個別に測定することは不可能
7 予防的管理のための測定方法のあり方
・排出濃度管理だけでなく排出量管理ができる測定方法へ
・評価や管理の目的にあった測定方法へ
・周辺住民や自治体に説明できる測定方法へ
・簡易測定法も活用した効率的な測定方法へ
化学物質管理のあり方についての市民からの提案
環境ホルモン対策国民会議事務局長・弁護士 中下裕子 氏
1 なぜ、化学物質管理が必要か
・化学物質には有用性がある一方で、人や生態系に有害なものがある
・20世紀後半以降、多種多様な化学物質が生産された。また、複合汚染や非意図的物質も生成された
2 化学物質管理の難しさ
・化学物質の数が膨大で(10万種)、データ取得が困難
・複合暴露や非意図的物質の管理の難しさ
・科学の進展に伴って新たな有害作用が発見される
3 化学物質管理のあり方
・安全性が確認された物質に限り生産と使用を認める
・ライフサイクル(生産から廃棄まで)を通じた総合的管理
・管理困難な物質は使用を認めない
・予防原則を基本とする
EUとアメリカのリスクと規制に対する姿勢の違い 日本の政策は?
化学物質問題市民研究会 安間武 氏
1 EU:予防的要素が大きく、リスクがないことを示すのは産業側
2 アメリカ:予防的要素が少なく、リスクがあることを示すのは政府
3 日本:アメリカと同様な市場重視・産業寄りスタイル