日時 | 平成18年7月28日から平成18年7月28日まで1日間 |
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場所 | 日本科学未来館 JAビル |
用件 | 環境効率最新動向セミナー 日本をリードする議員のための政策塾 |
環境効率の飛躍的向上によるエコイノベーション
東京大学生産技術研究所教授 山本 良一 氏
・地球温暖化問題に関する基本的認識
(1)地球温暖化が急速に進行している
(2)温暖化の主要原因は人為的な温暖化効果ガスの排出である
(3)地球温暖化に伴うインパクトは極めて大きい。生物種の大量絶滅回避の為には気温上昇を1.5℃以下に、人類への大きな影響回避の為には2℃以下に抑制することが提案されている。突発的な気候変動の可能性もある。
・IPCC(国連機関)第3次報告書の内容
(1)地球の表面温度は1861年から上昇し、20C中に0.6℃上昇した
(2)1950年代後半より、地表と地表から8kmの大気温度が10年間で0.1℃の割合で上昇中
(3)1750年以来、大気中のCO2濃度は31%増加し、過去42万年間で最高、おそらく過去2000万年間でも最高と考えられる
(4)過去20年間の人為的起源によるCO2放出の2/3は化石燃料消費で、残りの大半は森林伐採
(5)過去50年間の平均温度の上昇は人為的起源によるCO2増大が原因で、2100年の地球表面平均温度は1.4~5.8℃まで増大する
・CO2排出量を80%削減しなくてはならない
・ある不都合な真実(アル・ゴア著):全世界の科学者の言うことが正しければ破滅を避けるための時間はもう10年しかない
(1)海面水位上昇は4m以上で沿岸部は大きな影響を受ける
(2)熱波はもっと頻繁に、そして強力になる
(3)干ばつと森林火災はもっと頻繁に起こるだろう
(4)2050年までに100万種以上の生物が絶滅するだろう
・地球温暖化の引き返すことのできない時点(ポイント・オブ・ノーリターン)を越えてしまった可能性がある
・21世紀の氷床融解と海面水位の上昇は従来考えられているよりも早く、大きい可能性がある(島根県ほどの大きさのラーセンB棚氷が1ヶ月で崩落)
・インドや中国の温暖化ガスは今後も増加する
・シベリアの森林火災では日本1カ国分のCO2が排出されている
・地球温暖化を加速する要因
(1)北極海氷の減少による太陽光線の反射率減少
(2)炭素の吸収源が放出源へ転嫁、森林のサバンナ化・沙漠化
(3)シベリア凍土層及び浅海のメタンハイドレードの融解によるメタン(温暖化ガス)の大気中への放出
(4)植物からのメタン放出が温度上昇とともに増加
(5)大気汚染防止が進むと太陽光線の日傘効果が消失
(6)海によるCO2排出量が減少
・本年策定された「新・国家エネルギー戦略」で温暖化を止める事は不可能
・スウェーデンは2020年までに世界初の脱化石燃料社会を実現するというビジョンを発表
・知識集約型、脱物質サービス経済の実現
(1)エコ・イノベーション:環境適合設計、公共財の高品質化など
(2)社会システムのグリーン化:循環経済制度、グリーン調達、税財政制度のグリーン化
・EUはエコ・イノベーションに全力を挙げている(キーワードは3C:クリーン、賢明、競争力)
世界は重視する 環境教育
(財)日本生態系協会会長 池谷 奉文 氏
・2004年に制定された環境教育推進法は文科省の関与が少なく実効性なし
・何を教えるのか
(1)持続可能な発展の為の3要素
①自然生態系:太陽光、大気、水、土、野生生物
②持続可能な経済:1次産業、2次産業、3次産業、公共事業
③持続可能な社会:国内で80%程度の食料などの物質がまかなえる簡素な生活と自助・共助・公助
(2)持続可能な発展への障害
①自然生態系の破壊:野生生物の健全な生息で判断
②経済の問題:産業による自然生態系の破壊、土壌喪失
③社会の問題:人口、都市計画、ゴミ、贅沢
(3)多くの野生生物が生息する自然生態系を守る意味
①人間を取り巻く環境財:大気浄化、温度調節、水質浄化
②精神的財産:自然体験、うるおい、やすらぎ
③物質的財産:衣食住、薬品(遺伝子)、エネルギー
④災害対策:土砂災害の防止、水害の軽減
(4)環境問題の解決
①土地の確保:土地利用計画、トラスト活動(ブータンの憲法では、土地の6割を次世代に残すことになっている)
②野生生物の絶滅対策:ビオトープネットワーク、環境アセスメント
③経済問題への対策:持続可能な産業、税制改革、減価償却の改正
④社会問題への対策:コンパクトシティ、適正人口、3R
・環境教育は全ての教育に優先する→さもなくば、人類の生存基盤が失われる