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講演要旨

講演要旨

  • 2002年02月01日(金) 00時00分
  • 分類:活動
  • 投稿者:admin

 1月25日に生涯学習団体の「男塾」(男のサロン)にお招き頂いて行った講演の要旨です。長くなってしまいましたが、これでも一部なんです。根気のある方は読んでみてください。

続き

 「酒鬼薔薇」事件(神戸 小学生連続殺傷事件)直後に、多くの中学生が「気持ちはわかる」と反応。
 春奈ちゃん殺害事件(文京区 子供の友達の親を殺害)でも、容疑者に共感するという反応が、同年代の母親達を中心に強かった。

学級崩壊の特徴
① 落し物の異常な多さ・・・自他の所有や所属に関する認識力の未熟
② 衝動的なパニック症状や小暴力の多発・・・セルフコントロール力の欠如
③ 何かあるとすぐに自暴自棄になったり、失敗やビリを極端に恐れたり、いやな事ですぐにいじけてしまう・・・自己肯定心情が脆弱

非行の第3次ピーク期(1983年の校内暴力時代)に比べ「器物破損」は中学校で20倍、高校では34倍。「対教師暴力」や「生徒間暴力」についても4~5倍。

「気に食わない事があるとすぐに暴力をふるう」が中学生男子で30.9%、高校生男子で19.8%。女子はそれぞれ9.1%,5.4%。友達に対する暴力経験では、中学生男子が20.8%、高校生男子で14.7%。「したことはないが思った事はある」を加えるとそれぞれ39.0%,33.9%と4割近い。 
(総務庁 「青少年の暴力観と非行に関する研究調査」 1999年)

「ひと昔前なら、問題を起こす子達はツッパリで「反教師」を口にするなど行動が分かりやすかったが、今は普通に見える子供が突然行動に出て、対策が立てにくくなっている」 (1999年 文部省報告) ・・・ 「まさかあの子が」という普通の子がキレる。

文部省は、1997年から小学校に対しても「暴力行為」の調査を開始。

小学校6年で、日常的又は時々「イライラする」児童は78% (1998年 文部省調査)

いじめる理由・・・面白い   ①優越感 ②ストレス解消 ③ゲーム感覚

いじめられた時に「誰にも相談しないで我慢した」児童・生徒は37.8%。我慢した者に「どうして欲しかったか」と尋ねた回答のトップは「友達に助けて欲しかった」で46.8%。 
(総務庁 「いじめ・登校拒否・校内暴力問題に対するアンケート調査」 1998年)
しかし、「いじめられている人をかばうと、自分もやられるかもしれないから、知らんぷりするのは仕方がない」と答えた高校生男子47.5%,女子 48.8%。実際にいじめを見た際、「黙って見ていた」のは高校生女子の79.9%をトップに中学生でも7~8割。                  (総務庁調査 2000年)

学校は生活習慣の確立や親子のコミュニケーションの大切さ、家庭学習リズムの確立など相も変わらず原則ばかり要求している。授業については一部を除き一斉主義が継続され、日常生活においても集団性ばかり強調する。「みんな仲良く」「明るく目標に向かってベストを尽くす」「自ら考えて行動しよう」などできない状況にもかかわらず、そうした美しいスローガンを掲げて形の一致だけを求める。こうして、子供たちをよけいにイライラさせ疲れさせていく。学校や教師の意図を実践すればするほど、子供をイラつかせ、キレさせて、いじめや学級崩壊を招きかねないという悪循環の構造。

小学校3年・5年、中学2年を対象にした調査(よくある・時々あるの合計)
・むかついたりイライラする度合い
   友人に対して   65.5%
   親に対して    58.6%
   先生に対して   62.1%
・気に入らない事をされたら仕返しをする  32.4%
・むしゃくしゃしたら誰かに八つ当たりする 23.5%  
(東京都 「子供の基本調査」 1999年)
小学校6年生の全国調査
・不安を「時々」「日常的に」感じる   55.5%
      その理由  ①友達との関係がうまくいかない  51%
            ②授業が分からない        47.7%
            ③時間的なゆとりがない      29.3%
・「イライラ、むしゃくしゃ」することが「時々ある」   59%
                  「日常的にある」  19%
 その理由 ①友達との人間関係がうまくいかないとき  51.8%
          ②人にしかられたとき           45.7%
          ③家族関係がうまくいかないとき      35.5%
          ④授業が分からないとき          34.1%
(文部省 1998年)

柏崎市の少女監禁事件の容疑者(2000年)、京都の小2児童刺殺事件(1999年)、佐賀のバスジャック事件(2000年)、池袋での通り魔事件(1999年)、機長を刺殺し全日空機を乗っ取った事件の容疑者は、「社会的引きこもり」であった。20代、30代の引きこもりは数十万から百万人と推定される。
過酷な学歴競争時代の申し子達は、全力で勉強してきたにもかかわらず企業・社会・地域が自分を受け入れないという被害者意識を持ち、外の世界に出る事を拒絶している。また、事件を起こした人物がいずれも男性であった事は、一般に男性に対する期待度が女性に比べて高い事を表しているのではないか。

都市化・核家族化の進展に伴う家庭の孤立化、家庭や地域における子育て機能の低下が「育児不安・ストレス」を高めたり、子育てに対する責任意識が十分でないまま親になっている者が増えている事が、虐待の増加を招いている。
(総務庁 「青少年白書」 2000年)

親が「しつけ」に熱心な余り子供を虐待する事例が多い。同じく、教師の子供への指導が熱心な余り体罰・心罰を与える事例が多い。

家庭と学校には「遅刻をしない」「明るく元気に」「基本的生活習慣の確立」など、同一の価値観が貫かれている・・・学校と家庭の同化

親の姿
①子供の基本的な生活習慣作りの意義がわからず「食べる」「寝る」「遊ぶ」という基本のしつけがおろそか
②子供に対して愛情を感じる事ができずに悩んだり、何を話し掛けていいのか分からずに戸惑うなど、親になった動揺が浮き彫りになっている。そこから焦りや子供を私物化する気持ちが生まれ、幼児虐待の土壌が形成されてゆく
③親同士のコミュニケーション不足により、お互いに孤立した子育てとなっている
この結果、赤ちゃんや幼児が家庭で安心して生活したり、親に甘える事ができなくなる。
抱っこに違和感のある赤ちゃん(手や足を先生の体に回さない・拒否する・体を動かし落ち着かない)がゼロ歳児の4分の1にのぼる。  
(臨床育児・保育研究会 1999年)

「誰と食事をしている時が楽しいか?」に対し、「ひとり」を選んだ子が15.5%を占める。その理由は、①じっくり味わって食べられ、なんとなく楽だから ②一人のほうがリラックスできる ③文句を言われないから。  
(足立己幸著「知っていますか子どもたちの食卓」 2000年)

「自分にとってなくてはならないものは何か?」への回答で、トップはテレビの80%、2位の友達40%の倍。          (総務庁 1999年)

家族の縛りが弱い分、現在の家庭の方がいかにも自由で生きやすそうですが、共同性が喪失した「ホテル家族」からは親の教育力は生まれない。子供たちの物事に対する判断基準は、親を素通りして、物欲を煽る消費文化や流行文化に置かれることになる。
また、たとえ学校の管理主義がひどかったり、いじめや暴力が教室に蔓延していても、家庭が安心な居場所・逃げ場所として我が子に認識されていれば、自殺だけは避けられる。ところが、家庭が家族同士のコミュニケーションそのものを成立させない場になっているだけでなく、その家庭にまで学校的価値観が浸透して、家庭の学校化が進行している状況では、そうした役割は期待できない。
家庭をとりまく地域でもまた、共同性が崩壊しており、親達が地域や社会の支えを得られなくなっている。

小5と中2を対象として1999年に行われた国際比較調査では、「弱いものいじめをしないように、とは全く言わない」という親は、父親76%、母親70%、「友達と仲良くしなさい、とは全く言わない」という親も、父親81%、母親70%で、基本的なモラルでさえ子供に伝え切れない現状。

父親のイメージを漢字一文字で表すと ①「優」 ②「働」  ひと昔前は「恐」「厳」
「家で一番怖いのは?」  父 27%   母 24%
母親からよく言われる言葉  
    ①勉強しなさい ②お手伝いしなさい ③自分の事は自分でしなさい
父親からよく言われる言葉
    ①勉強しなさい ②自分の事は自分でしなさい ③お手伝いしなさい
父と母の差異がない。

父親が家庭にいる時間に反比例して非行が減るが、現代の父親は忙しい。

    
小学校教師で、これまでに学級担任を辞めたいと思った事のある教師は、全体の34.8%。その理由として最も多かったのが、「子供との関係、学級経営」が56.6%。            
(日教組調査 1999年)

先生への尊敬の度合い(世界他都市との比較)
北京(97%) ミルウォーキー(96%)  ソウル(86%)  オークランド(85%)  サンパウロ(61%)  東京(54%)   
(ベネッセ教育研究所 「子供にとっての教師」 1997年) 

今日の子供たちが危機的状況に陥っているのは、子供たちの道徳心の欠如や個々の学校や家庭の教育方針に問題があるからだと簡単には結論付けられない。近年の社会状況の変化の中で大人と子供の関係性のあり方が問題となっている。
例えば援助交際について、大阪府警は「援助交際は売春です」というポスターを学校に貼りましたが、ユニセフのポスターは「犯罪です。少女買春」で、成人男性への警告となっている。

「暴力がはびこるのは大人がだらしないからだ」と考える生徒は中学生で38%、高校生で43.7%、少年鑑別所に所在している暴力非行少年は15.5%。
この大人への不信感が「オヤジ狩り」や「ホームレス狩り」を支えている。

郊外型の街並み(生活の匂いがしない)では子供たちがいきいき育たない。

18歳~24歳を対象とした自国の社会に対する満足度調査 (1999年 総務庁 日・韓・米・露・英・独・仏・スウェーデン・比・タイ・ブラジル) において、日本の若者は35.2%しかこの社会に満足感を抱いていない。93年より8.3%下がり11カ国中9番目。
「自国の社会でどんな事が問題か」への回答(複数)は ①学習によって収入や仕事に格差がある(52.2%) ②よい政治が行われていない(48.8%) ③環境破壊に対して国民が無関心(42.9%)など、社会そのものへの不満が強い。

世界がもし100人の村だったらより

70人が有色人種で
30人が白人です

61人がアジア人で
13人がアフリカ人
13人が南北アメリカ人
12人がヨーロッパ人
あとは南太平洋地域の人々です

20人は栄養が十分ではなく
1人は死にそうなほどです
でも15人は太り過ぎです

全ての富のうち
6人が59%をもっていて
みんなアメリカ合衆国の人です
74人が39%を
20人が、たったの2%を分け合っています

全てのエネルギーのうち
20人が80%を使い
80人が20%を分け合っています

75人は食べ物の蓄えがあり
雨露をしのぐところがあります
でも、あとの25人はそうではありません
17人は、きれいで安全な水を飲めません

銀行に預金があり
財布にお金があり
家のどこかに小銭が転がっている人は
いちばん豊な8人のうちの1人です

村人のうち1人が大学の教育を受け
2人がコンピューターを持っています
けれど、14人は文字が読めません

もしもあなたが
空爆や襲撃や地雷による殺戮や
武装集団のレイプや拉致におびえていなければ
そうでない20人より恵まれています

この村では、食糧援助よりも化粧品に40倍のお金が使われます
そして、教育よりも武器に10倍のお金が使われます

豊かな20人は彼らの持つ富のたった0.2%で貧困を終わらせる事のできる最初の世代です

この村は
自分自身を何回も木っ端みじんにできるほどの核兵器を持っていて
これを10人で管理しています
残りの90人は彼らとうまくやっていけるのだろうかと首をかしげ
もし何らかの不注意や技術ミスで核兵器を発射してしまったとしたらどうするのか
たとえ彼らが核兵器を取り壊そうと決めたとしても
この村のどこに危険な放射能を帯びた廃棄物を処分するのか
とても心配しながら見守っています

この事実を伝えた後に、一人一人がどうすればよいのかを述べました。