日時 | 平成29年2月3日 |
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場所 | 三井住友銀行本店ビル(東京都) |
用件 | バイオマ産業都市推進シンポジウム に参加のため |
1 未利用木質バイオマス発電の地域貢献
グリーン・サーマル(株) 代表取締役 滝澤 誠 氏
(1) 山元に設置するバイオマス発電の重要性 1 新エネルギーの供給:他の新エネと違い安定しているのでベース電源になれる 2 林業振興、山林整備 3 地元貢献:山元で生産した電力でも送電線網で輸送コストを掛けずに 納品でき、地方産業の創出に貢献できる (2) 山側でのバイオマス発電システムの必要性 1 伐採された木材はA材(梁などに使用され伐採量の25%)、B材(集成材や 合板などに使用され伐採量の25%)が利用され、C材(伐採量の40%)、 D材(伐採量の10%)は未利用材 2 C、D材が取引されることで売り上げ増となり、次期森林資源循環費用に 充てられることで適切な森林整備が推進される。計画的植林=計画的伐採 (3) 事業概要(標準モデル6250kWの場合) 総事業費 約32億円(チップ加工設備込み) 面積 12,000~30,000㎡(原木置き場込み) 開発期間 営業運転まで約3年 売上 約11億円/年(買取制度20年固定) 燃料 購入費 約6.5億円/年 購入量 約8万t(含水50%換算) 課題 燃料8万tの収集が難しい。賦存量は申し分ない場合が多いが、現 況で2万t程度の場合が多い。輸入材であるPKS(パーム椰子殻) で補充する。
2 バイオマス事業におけるファイナンスの現状と課題
一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 専務理事 品川 良一 氏
(1) 資本と借入金の調達 1 資本の調達 ・事業者単独では自己資本が不足するケースが多い:金融機関が事業の 評価をしにくいので融資ができにくい → 頭金の増大 ・スポンサーと組んで合弁事業として資本を厚くする等の対策 ・グリーンファンドによる出資の活用(メザニンファイナンス) 2 借入金の調達 ・プロジェクトファイナンス仕立てによる資金調達 ・バイオマス事業の事業性評価の難しさ 事業の実例や情報が不足(太陽光は豊富) 事業の入口の原料調達、出口の廃棄物等の処理が難しい 制度の変化が激しい (2) メザニンファイナンス 1 メザニンは中二階という意味で、出資と融資の中間に位置する融資形態。 一般的には劣後ローン、劣後債、優先株などを意味する。 2 銀行からの融資では対応困難なリスクマネーの確保に有効 3 増資による既存株主の議決権希薄化を回避または軽減できる (3) プロジェクトファイナンス 返済財源はプロジェクトから生み出されるキャッシュフロー(例:売電収入) であることなどの特徴がある (4) 事業性評価の主なポイント 1 EPC(設計・調達・建設) ・バイオマスのEPCとしての実績 ・事業者とEPCの責任分界点 ・コストオーバーラン、タイムオーバーランの可能性とその場合の費用負担 2 燃料供給 ・供給量、価格、長期性 ・規格(大きさ、形状、含水率等)の適切性 ・乾燥の時間、場所 ・在庫の有無と場所 3 メンテナンス ・有資格者の確保 ・メンテナンス体制 ・海外メーカーの設備の場合の部品調達やメンテ体制 4 保険 ・売電収入補償特約 5 事業者はハッピーシナリオを採用する場合が多いが、うまくいかなかった 場合にどの程度で食い止められるのかが重要
3 再生可能のエネルギー市場の動向とバイオマス発電への期待
(株)日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 部長 段野 孝一郎 氏
(1)2030年度の再生可能エネルギー導入目標でバイオマスに対する期待は大きい 現状252万kW → 2030年度602~728万kW (2)新FIT(固定買取制度)法においても、送配電事業者を介して小売電気 事業者による電源としての活用は可能で、インバランス(元の計画との 違い)特例制度も継続することから、小売電気事業者にとってベース ロードとしての意義も大きい (3)バイオマス発電事業の事業化ポイントは燃料調達リスクと調達コストの 軽減 ①山側の事業者にとってもメリットのある仕組みが必要 ②中小規模案件における運搬コストの低減や熱利用等の工夫が必要 ③金融機関に対しては、今後は出力制御(*)の影響評価も重要 出力制御:再生可能エネと省エネの進展や原発再稼働により、 出力抑制指示の発動リスクが高まっている。バイオマス発電は 抑制指示順位が比較的高い
4 バイオマス都市さが
佐賀市バイオマス産業都市推進課 創エネ戦略室長 井口 浩樹 氏
佐賀市における藻類産業集積事例の紹介
5 パネルディスカッション バイオマス事業の課題と今後の展開
パネリストはこれまで講演した各講師
(1) バイオマス熱利用 1 排熱は利用できるが事業としては成り立ちにくい(熱は簡単に運べない) 現状では「製材事業者が発電」「発電業者がハウス栽培」などに限られる 2 国は熱利用に力を入れてくる ・プロジェクトの立案段階で熱利用を考える(後に付け足せない) ・熱利用している業者(銭湯など)がプロジェクトを立ち上げる 3 熱利用できる立地条件 ・燃料の含水率調整用 ・熱需要のあるところに発電施設を作る (2) 原料確保 1 集荷側との協力が必要 2 物流と在庫コントロール ・どの地点まで取りに行くか ・原料の含水率が高いと水を運んでいるようなものでコスト高 3 失敗事例(収集量変動リスク) 山側は発電のためではなく製紙や建材用に木を切っているので季節変動がある (3) 今後の展開 1 高付加価値のものから手を付けたい 2 多重利用(多段階利用)したい 3 金融機関からの情報提供も重要 4 CO2削減への貢献度も検証が必要 5 新事例 ・パワー(電気、熱):進んでいる ・フューエル(バイオエタノールなどの燃料):航空機燃料が有望 ・マテリアル:資源循環として注目(例:化粧品原料、セルロースナノファ イバー)