日時 | 平成23年5月24日 |
場所 | 参議院議員会館 |
用件 | ケミネットシンポジウム「今こそ化学物質政策基本法の制定を」に参加 |
●化学物質政策基本法の必要性
有害化学物質ネットワーク(ケミネット) 中地 重晴
1 現行法制度の問題点
(1)司令塔なき省庁縦割り
(2)規制と推進が同一官庁にある(原発と同じ構図)
(3)化学物質の影響を受ける側(国民・生態系)に立っていない
(4)複合影響の評価が欠如→リスクの過小評価のおそれ有
(5)これらの結果、対策に隙間が生じ、統合性が欠如し、後追いになる
(6)化学物質による子どもたちへの負荷は年々増加(喘息・アレルギー、先天性奇形、発達障害児などが増加している)
(7)事例
① | 殺虫剤(ネオニコチノイド系農薬)
a 毒性
- 子どもの発達への影響が懸念される
- 人への被害報告あり
- ミツバチ大量死の原因
b 同じ成分でも所管法令が異なる→規制の隙間
- 用途が、松枯れ防除・ガーデニング・農業用の場合は農薬取締法
- 用途が、ペットのノミ取り剤の場合は薬事法
- 用途が、家庭用殺虫剤・シロアリ駆除剤・建材の場合は直接の規制法がない
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② | シックハウス・化学物質過敏症対策
a シックハウスに関する主な法律
- 学校は文科省、建築物や品質は国交省、衛生環境は厚労省と所轄官庁が分かれており、対象化学物質も異なる
b 13物質の代替化は進んだが、安全性は高まっていない
- ホルムアルデヒドは削減されたが、ネオニコチノイド系農薬が
使用されるようになった
- これまで問題とされてきた13物質の使用は削減されたが、他の未規制VOC(揮発性有機化合物)の使用が増え、TVOC(総揮発性有機化合物)はむしろ増大傾向。例えば、
最近はカーペットの接着剤が問題となっている
- 化学物質過敏症対策は手付かずのまま
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③ | 家庭用品
- 有害家庭用品規制法の指定物質はわずか20物質のみ
(市場に出回っている化学物質は約10万種)
- 成分表示が義務付けられていないものが多い
(消臭・芳香剤や抗菌・除菌製品など)
- 毒性が分かっていないものも少なくない
(有機リン化合物、有機フッ素化合物、ナノ物質など)
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④ | 表示が所管法令ごとにバラバラ
一般名:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムは、
医薬部外品ではポリオキシエチレンラリルエーテル硫酸塩と、
化粧品ではラウレス硫酸Naやパレス硫酸Naと、洗濯用洗剤では
アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムと表示される
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⑤ | アスベスト問題
- 被害が明らかになった後での規制では遅い
- 有害性を調査し、規制する体制が必要
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2 ケミネットの提案
(1)基本理念
① | 化学物質の総量削減 |
② | 「ノーデータ・ノーマーケット」原則
(データのないものは市場に出せない) |
③ | 化学物質の影響を受けやすい人々
(胎児や子どもなど)や生態系への配慮 |
④ | 化学物質のライフサイクル管理
(研究開発、製造、使用、リサイクル、廃棄処分に至るまで) |
⑤ | 予防原則(安全が証明できないものは使用しない) |
⑥ | 代替原則(より有害性の低い物質に代える) |
⑦ | 協働原則(全ての利害関係者の参加) |
⑧ | 国際的協調 |
(2)化学物質安全委員会の設置
① | 業界を所管する省庁ではなく、国民の健康と環境を
守るという立場に立つ、中立・公正な独立組織
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② | ステークホルダー会議を設置し、施策の立案に
当たって広く関係者と協議
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③ | 事務局員は、省庁職員やNGOなどからの民間登用とする
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●市街地・公共施設での農薬被害について
滝ヶ崎 照子
1 農薬使用規制の現状
(1)屋外(公園緑地、街路樹、一般植栽など)では、
「住宅地等における農薬使用について」(農水省・環境省通知、2007年)と
「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」(環境省、2008年)がある
- 物理的防除(剪定・捕殺・焼却など)の優先
- 発生初期の防除
- フェロモンなど生物農薬の利用
- 散布以外の方法を優先
- 散布時の立ち入り制限や事前周知など
- 有機リン系農薬の現地混合禁止
- 定期散布の禁止
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(2)屋内では「建築物衛生法」(厚労省、2003年改正)と
「建築物における維持管理マニュアル」(厚労省、2008年)がある
- IPM(総合防除)を行なう
- 十分な清掃
- 生息状況調査の導入
- 殺鼠剤や殺虫剤を使用する場合の人体への安全性の担保:
処理前後3日間の掲示や、日常的に乳児がいる区域への薬剤散布を避ける等
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2 行政施設での化学物質使用状況調査の結果
(1)千葉県内22市町へのアンケート、及び千葉県立学校における
農薬の使用状況調査
(2)住宅地通知が守られていない例
(適正使用さえ守られていない例がある)
- 事前通知なしで散布されている
- 希釈倍率が守られていない
- 有機リン系農薬の現地混合散布
- 定期散布
- 使用農薬は有機リン系が多い
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(3)有機リン系農薬
- 有機リン系はPRTR法で1種(劇物)に指定されているものが多い
- 低濃度でも摂取した子どもはADHDになりやすいとの報告がある
- 母体内で暴露した子どもは就学年齢前後のIQが低くなるとの報告がある
- EUではほとんど使用禁止
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(4)対策
- 無農薬による管理を実施している自治体もある
- 通知やマニュアルの限界 → 法制化して罰則を設けることが必要
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3 今の子どもたちの現状
(1)ダイオキシン類・DDT・水銀など、新生児の100%から検出される物質があり、
胎児の時点で数多くの環境汚染物質にさらされている
(2)症例
- 家具屋に入ると頭痛がする
- 車は窓を開けないと気分が悪くなる
- ホームセンターへ行くと鼻水が止まらなくなる
- プールの塩素処理室の前で咳き込む
- 新築物件に転居し喘息が悪化
- 小学校の耐震化工事をきっかけに化学物質過敏症を発症
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(3)現状のまま化学物質にさらされ続けると、化学物質過敏症の発症リスクは限りなく大きい
●表示について
協同組合石けん運動連絡会
1 PRTR(科学物質排出移動量届出制度)指定物質の排出量
- 合成界面活性剤(AEやLAS)を含む合成洗剤が連続してワースト10入り
- 家庭で排出されるPRTR指定物質の半分は合成洗剤で、殺虫剤も多い
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2 自治体アンケート結果
- 合成界面活性剤が有害:2/3が認識
- 石けんはPRTRに指定されていない:1/2が認識
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3 探せない成分名
- PRTR対象成分は分かるが、どの商品に入っているか分からない。
メーカーのwebでも分からない
- 同じ成分でも所管省庁によって表示が異なる(別名が多い)
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4 分かりやすい表示へ
- 表示名の統一が必要
- GHS制度(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)のような有害性のラベル表示が必要
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