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学校給食学習会 自治政策講座

学校給食学習会 自治政策講座

日時平成21年7月29日から7月31日まで3日間
場所 7月29・30日 ローズホテル横浜
7月31日  自動車会館(東京都)
用件 7月29・30日 学校給食学習会 に参加
7月31日  自治政策講座 に参加
学校給食学習会

「食育と学校給食、政策と学校給食現場のギャップ」

学校給食ニュース 坂下 圭貴
1 学校給食法改定のポイント
食への感謝の念や学校給食を通した地域文化への理解、郷土への愛着など、食育推進上の教育的意義を明確にする
学校給食実施基準を法体系に位置づけ
栄養教諭の役割・義務の明確化
学校給食衛生管理の基準を法体系に位置づけ


2 学校給食法の課題
学校給食の実施者は誰か:地方自治体だが、実施基準と衛生管理基準の権限強化で自主性が薄れるのでは
学校給食を義務化せず実施できるのか:推奨法(やるならこの方法)のまま、給食センター化も認める(食育法は単独が望ましいとしている)現状で食育の目標が達成できるのか。栄養教諭の配置も不安定なまま
更なる合理化につながるのでは:民間委託、センター化、加工食品や大量生産品の利用などの道を広げるのではないか
学校や地域の特徴を生かせるか:実施基準で柔軟性が失われるのでは


3 学校給食センター化の流れが加速
大規模センターの現状
1万食を超えるセンターが07年で全国19施設。計画中、建設中も多数
センター化急増の理由
  • 老朽化、更新期
  • 市町村合併によるシステム統合
  • 少子化による学校統廃合
  • 学校給食法改定と衛生管理基準強化への対応
  • 地方財政問題
  • PFI方式が可能となった(初期の財政負担が減少)
合理化通知≠センター化促進
「合理化通知は単独調理場を共同調理場に変えていくという趣旨として出したものではない」(2004年 文科省)
山口県周南市では13000食のセンターが計画されていたが、食育を理由に単独・親子方式に転換


4 学校給食の現実
正規調理員の減少(委託やセンター化による)
民間委託が増加
食材の発注も委託業者が行う事例あり(食材の質の確保は大丈夫か)


5 食育と学校給食
栄養教諭
食育推進計画での位置づけ:各地域の栄養教諭を中核として、学校、家庭、地域住民、保育所、PTA、生産者団体、栄養士会等の関係機関・団体が連携・協力
地場産使用が運動から政策へ
  • 食育推進基本計画で、学校給食の地場産物使用割合目標は30%以上
  • 今治市の食材調達のルール
    産地優先順位は学区→市内→県内→地域内→国産で、有機農産物を優先し国外産は使わない



「地産地消に根ざした食育の方向性」

日本獣医生命科学大学 教授 佐々木 輝雄
1 食の意義・役割
食は体をつくる:体は3ヶ月あまりで総改装
食は能力をつくる:頭のネットワーク(シナプス)は食事の内容次第
食は寿命をつくる:血管年齢・骨年齢・腸年齢の若さはバランスある食事。生活習慣病にも影響

2 輸入が止まれば悲惨な状態
ご飯でさえも毎日食べられない
主な食品の自給率:野菜79%、豚肉50%、牛肉43%、魚57%、大豆5%、果物41%

3 食材・食品を捨てる日本
毎日3000万人分(供給の1/4)の食材を廃棄
飢えている人:10億人(増加中) 飢えで死ぬ人:年間500万人以上

4 日本の食料過剰と食生活の乱れ
外食依存症:食支出の中で、外食+中食(パンや弁当など)が44.5%
⇒糖分、塩分、脂肪、添加物の取り過ぎ
増える単身者
  • 男性単身者で食事を作れる人は18.9%(家事を知らない単身高齢者は悲惨な状況)
  • 総世帯数は4956万で増加中:単身世帯、夫婦のみ世帯が増加
大学生アンケート
  • 結婚するなら料理のできる人・・・男女とも90%前後
  • 料理をまったくしない人・・・男46%、女38%
  • 男女が互いに苦手を相手に期待

5 食育基本法
食育の目的
  • 何を、どのようにして料理して、どのような心がけで、どのように食し、どのように伝えていくか
  • より良く生きるために、食を通して考え、実行していく
  • 智育、徳育、体育の基礎となるべきもの
いくつかの視点
  • 生産から食卓までを学ぶ:流通で働く人の役割を知る
  • 食べ方、作り方、体への作用:食の作法、栄養と体の関係を知る
  • 食からの人生:誕生から死までの食の大切さ、有り難さ、楽しみ方を知る

6 食育の進め方
(1)食育の内容
基礎の習得
  • 食の場のコミュニケーション:一家団欒の楽しさ
  • 食に関する基本所作:マナー
基礎の理解
  • 自然の恩恵などへの感謝:モッタイナイ
  • 食文化:郷土料理、年中行事と行事食
健全な食生活の実践
  • 食品の安全性:食中毒、衛生
  • 栄養のバランス:偏食の悪さ、生活習慣病の理解
  • 食生活リズム:朝の欠食、早寝早起き朝ごはん

(2)2006年 武蔵野市のアンケート結果より
家庭で行いたい食育:「食べ物を粗末にしない」「規則正しい食事」「作法としつけ」が上位
給食に期待する食育:「栄養バランス」「偏食の矯正」など若い親の苦手な点が目立つ

7 地産地消のすすめ
(1)地球上の自然法則
食は命のもと
  • 4里四方の食材を大切に、身土不二
  • 風土が体をつくる(例:日本人はアルコールや牛乳の消化弱く、腸が長い)
食の供給を他民族任せの国はない
生き物は全て地産地消
  • 生き物は自分の縄張りを持っている
  • 餌が足りなければ他の地域へ
  • それでも餌が足りないと「飛ぶ、泳ぐ、冬眠」で地産地消を維持

(2)地産地消の範囲
目的により範囲の想定が変わる
  • 食材や調理法を大切に→市町村が多い
  • 生産者の顔が見える、安全な食材→都道府県単位が多い
  • 日本食、和食を大切に(≒自給率向上運動)→日本全体が範囲
共通項
  • 産地や生産者が把握できる
  • 新鮮である

8 地産地消で食育を
(1)学校給食への食材提供
①食育推進基本計画にみる地場産使用の推奨
  • 地場産物:顔が見える、話ができる(生きた教材)
  • 3つの効果
    i 地域の自然、文化、産業を理解
    ii 感謝の念を育む
    iii 地産地消の推進
    
地場産野菜等を導入するときの利益配分の理念
  • 生徒に:美味しさと関心を(次世代に食育で夢を託す)
  • 地元農家に:供給継続を可能な価格保障を(農業衰退ストップ)
  • 学校、調理場に:調理上の手間を負担し、調達不安の克服(マイナスの利益配分にならざるを得ないが、使命を貫く)
利点と課題
  • 学校(保護者)にとって:食育の進展
  • 農家にとって:新たな生きがい(栽培意欲増進)、種類と量に応えられるか、経理などの事務処理をどうするか
  • 調理場にとって:規格の不ぞろいのため、調理上の苦労が大きい。農産物の生育度によって使える部分が変わる
  • 他の課題:配送の手配や負担。給食費値上げの問題
地場産の利用可能性モデル
  • 農家個人との契約が主:武蔵野市、昭島市等の都市住宅地域
  • 農家グループとの契約が主:日野市等の住宅地と農地の調和地域
  • 地域農協や直売所との契約も含む:埼玉県、栃木県等、農業維持を行政目標にしている地域
  • 給食食材の調達ルート
    i 学校給食会(都道府県単位に存在)に依存 
    ii 学校が基準を作り取引企業を選定
    iii 品目ごとに入札で調達
    iv 栄養士等が農産物生産者や加工業者と関係づくり
    
  • 戦略的展開
    i 地元枠の設定(地元農家の価格上の優位性が少ない場合)
    ii 農家のグループ化(供給日時や量を補い合う)
    

9 武蔵野市の事例(学校給食が最高レベル H19に文科省より表彰)
(1)よい給食の要素
安心できる食材選び
  • 市内産野菜の使用率約20%
  • 減、低農薬栽培野菜約80%
  • 米は農家との契約栽培米で7分ずきの米を使用
  • 伝統食材も使う:ひじき、高野豆腐などの乾物類も使う
手づくり調理へのこだわり
  • 半調理品、カット野菜、化学調味料を使用せず
  • 調味料:国内産、原材料生産者の明確化(鶏がらスープやカレールーなども一から作る)
  • 残留農薬、遺伝子組み換えについても独自の検査を行う
積極的な食育
  • 栄養士による栄養指導とクラス訪問指導(紙芝居やビデオも作成)
  • 調理実習
  • 保護者との交流(定期試食会)
食農教育:一部の小学校では食材供給農家での農業体験を実施
財団法人での運営を検討中

(2)セカンドスクール(農山漁村で宿泊しながら体験)も先進地
  • 開始:小学校全体で1995年から、中学校全体で1996年から
  • 目的:人間として自立するための基礎的能力を身につける
  • 実施機関:4~7泊(全員参加が基本)
  • 実施場所:長野県、山形県、新潟県、山梨県など(学校が選定)
  • 2008年4月から文科省、農水省、総務省の連携で同様のプランがスタート



「新しいアレルギー対応マニュアルにおける学校給食現場と保護者、子供たち の関係性について」

NPO法人アトピッ子地球の子ネットワーク 事務局長
赤城 智美
1 学校のリスクコミュニケーションネットワークの構築が必要(危険回避の ための対話を充実)
危険の中身をはっきりさせること
  • 何が、どのくらい危険、その根拠
  • 設備、人員、経験、環境について検討
全ての情報を関係者全員で共有する
情報の更新が必要(学年や担当者は変わっていく)

2 学校生活管理指導表(アレルギー疾患の児童生徒の情報を把握するため保護者が記入)
配布されたが保護者への聞き取りはない事例がある
提出したが、今までと変わらない事例がある
診断書を提出したが、「これでは不足」と言われた事例がある

3 教育の機会均等(≠みんな同じ)
どの子も健やかに学ぶ権利を持つ
支援があって初めて同じになる子(例:下肢障害児)に対して、どのように支援するかが重要
子ども自身が意欲的に食に立ち向かう力を身につける場とならなければいけない

4 食物アレルギーの傾向
症状の傾向
皮膚症状91.2% 呼吸器31.3% 粘膜症状28.8% 消化器症状(嘔吐、腹痛、下痢)14.6% ショック症状(ぐったり、血圧低下)10.1%
年齢ごとのアレルゲン傾向
加齢とともに鶏卵や乳製品は減るが、甲殻類や果物は増える

5 感受性の背景
 残留農薬、食品添加物、ダイオキシン、水銀、植物が持つ毒性、カビ

6 農薬による体への影響
農薬(化学物質)の作用
量が少ない間はほぼ影響がないが、一定量を過ぎると影響が表れる
トータルボディロード(体の許容限界)
これを超えると、急激に発症→解決策は化学物質の総量を減らすこと
腸内細菌叢への影響
  • 腸内には100種類以上、100兆個の最近が棲んでいる
  • いろいろな菌が棲み分けてバランスを保っている
  • 腸内細菌叢のバランスが悪化すると腸内の微生物が毒素を出し免疫バランスに影響を与える
  • 残留農薬や食品添加物などの化学物質は腸内細菌叢のバランスを乱す
悪循環
  • 食料費中の外食比率、食料費中の加工食品比率、妻の就業者数はいずれも増加傾向
  • 最近の子は、微量のアレルゲンを持つ子が増加している



自治政策講座「持続可能な社会へ 自治体の再構築」 「いま問われる地域社会政策 貧困・格差への行政の役割」

上智大学 社会福祉学科 教授 栃本 一三郎
1 プロローグ
 人口減少と高齢化で、衰退する地域もあれば、維持できている地域もある

2 疑問
 社会福祉の領域での様々な自治体計画は本当に真に求められるものなのか? うまく機能しているのか?

3 社会福祉領域の計画の特徴
老人保健福祉計画、介護保険事業計画、児童分野、障害者分野の自治体計画のうち、介護保険事業計画だけは財源があり必要度が高いので機能している
社会福祉の個別領域の中の計画で連携がない
福祉領域の計画で広がりがない
市民の参画はほとんどない(参加は一部見られる):市民参画には長時間、多数回の検討会の開催が必要

4 錯誤
社会福祉領域での様々な計画は、社会学者や社会計画学者、社会福祉系学者に依頼し、またシンクタンクを活用して策定している→叩き台がそのまま計画になる
それらは真に地域福祉の向上に繋がっているか? 真に自主的な計画か? 実効性は?
結果的に計画作りだけに終わっている:心を込めて計画を作った人がチェック(See)しなくてはならない

5 結果
計画作りに終わる理由
  • 計画という手段が政策という認識で理解されていない(施策であっても政策ではない)
  • 政策学者が加わっていない
  • シンクタンクに依拠している
行政職員も「やらされている」意識で、行政能力の向上に繋がらない。自治体職員は施策は作れるが、政策を作ることは難しい
地域住民の格差や貧困の解決に繋がらない

6 展開
社会福祉から社会政策へ、制度から政策へ
社会福祉について、中央政府では政策をうまく作れなくなっているので、地方政府が作る時代



「地域社会の保全と再生  撤退の農村計画」

慶應義塾大学 環境情報学部 准教授 一ノ瀬 友博
1 はじめに
 消極的撤退→自然消滅
 積極的撤退→農村地域の選択と集中

2 日本の農村地域を取り巻く状況:グローバルとローカルの摩擦
世界的な人口爆発と日本の人口減少
日本の人口:鎌倉時代760万人、江戸幕府成立時1230万人、江戸時代中期3130万人、明治維新3330万人、2100年推計低位4640万人
世界的な農作物の需要増大と日本の食料自給率の低迷
過疎化の進行と耕作放棄地の増加
限界集落問題の顕在化:2035年には国土の4割に人がいなくなる

3 日本の農村地域の変化
江戸時代の人口増加を支えた農村地域→いまは限界集落
自給的な農村地域のあり方と国土管理
必ずしも自然豊かではなかった過去の里山の姿
第二次世界大戦後の国土計画と農村地域における過疎化の進行

4 農村地域の問題
優良農地においても(圃場整備済の農地でも)起こる耕作放棄の問題
→人間関係の希薄化
限界集落化(居住地化)から廃村へ:消極的な撤退の進行
農業が支えてきた自然環境の消滅:里地里山が支える生物多様性
荒廃する農地と林地:誰が国土を守るのか

5 農村地域における選択と集中の必要性:全ての集落の活性化は非現実的
積極的な撤退により必要な資源(資金、人口、労働力)を必要とされる場所(ゾーニングが必要)に投入
集落移転という選択肢と跡地管理のあり方
流域単位(水のつながり、歴史的つながりがある)における多様な主体による国土管理:地方都市を中核とし、50年後の維持を目標
国土レベルにおける選択と集中の必要性:集落移転も視野に入れる。放牧や自給生活の場の提供

6 地方自治体が担う重要な役割
市町村レベルにおける中長期的な戦略的将来像の策定:集落の持続性診断(集落健康診断)。指標はコミュニティ、立地(傾斜)、人口、高齢化率、公共サービス水準、住民意欲などなど
キーパーソンとなる職員の育成:金より人、リーダーよりキーパーソン(企画・調整・事務局がこなせる人)、集落支援員制度も活用
外部の人材の受け入れと積極的な高等教育機関の活用
流域圏と伝統的文化圏における広域連携
ファミリービジネス、コミュニティービジネスを基盤にソーシャルイノベーション(社会変革)をファミリービジネス、コミュニティービジネス:地域課題を分析し、問題解決とビジネス展開。個益と公益のバランスを保つ。地域資産を生かしたスモールビジネス

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