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NOMA行政管理講座 に参加

NOMA行政管理講座 に参加

日時平成19年10月24日~平成19年10月25日まで2日間
場所24日 日本経営協会(東京都)、25日 日本経営協会中部本部(愛知県)
用件NOMA行政管理講座 に参加

概要 (24日)

地方議員のためのバランスシート・行政コスト計算書の読み方

公認会計士 中村 元彦 氏

1 バランスシート

①正味資産:用地取得に当てられた国庫支出金以外は耐用年数に合わせて償却を行っている

2 行政コスト計算書

①発生主義:非現金支出についても資源の消費の観点からコストと考える(減価償却費や退職給与引当金繰入れ等)
・減価償却費:使っているのだから価値の減少(資源消費)として、現金は支出していないがコストとする
・退職給与引当金繰入れ:退職はしていないが、退職手当による条例や規程により、将来払う額が増加しているので、増加分をコストとする
②性質別経費
・人にかかるコスト:行政サービスの担い手である職員に要するもの
・物にかかるコスト:地方公共団体が最終消費者になっているもの
・移転支出的なコスト:他の主体に移転して効果が出てくるもの
・その他のコスト:上記に属さないもの

3 バランスシートの活用

①科目自体から分析
・地方債と対応する基金の状況:地方公共団体の規模に対する地方債の絶対額と対応する基金(貯蓄)の状況(一年内と外)
・税金等の回収状況:過年度分の未回収を示す未収金の状況及びその回収可能性
②社会資本形成の世代負担比率(最も重要な分析)
・次世代による社会資本の負担比率(負債(もしくは地方債)/有形固定資産):この比率が高いほど将来世代の負担が大きいことになる(財政の硬直化につながりやすい)
・これまでの世代による社会資本の負担比率(100%-次世代による社会資本の負担比率もしくは正味資産/有形固定資産)
・絶対値という基準はなく、経年で比較
③類似団体との比較
・人口による設定が有効
・但し、必ずしも規模だけでなく、環境(例:河川の有無)などについても注意を払う必要がある
④流動比率(流動資産/流動負債):短期的な返済能力

4 行政コスト計算書の活用

①経年比較:項目別経年比較でサービスの提供状況の推移が把握できる
例:経年的に人にかかるコストが増加→人に頼る部分が多くなっている
例:経年的に補助費等が増加→他の会計を含めた分析が重要 
②収入項目対行政コスト計算書:目的別の項目別の比率を見ることにより、その分野の受益者からの使用料、手数料等や資産から生み出される収益でどれほど賄われているか、税等の一般財源がどれほどその分野に投入されているかが分かる
③収支差額(差引一般財源増減額):持続的なサービス提供に責任を持つため、マイナスが続くことは望ましくない

5 バランスシートと行政コスト計算書の更なる活用

①活用の留意点
・数値そのものの大小や経年比較、類似団体との比較によって一面的な評価をすべきでない
・数値の背後にある事情を様々な角度から読み取り、予算や決算から判断できない要因を探り当てる努力が必要
②活用のポイント
・類似団体との比較が重要
・作成が目的ではなく、活用して分析しなくてはならない
・住民に対して分かりやすい説明:図表活用、用語解説、経年変化の理由、類似団体の適切なピックアップなど
③総務省方式からの応用:施設別のバランスシートや行政コスト計算書の作成(例:教育コストと授業料なども有)
④現状の問題点
ⅰ 長所:全ての地方公共団体を通じて統一的にデータを把握できる
ⅱ 短所
・土地のように有形固定資産を売却した場合はバランスシートにこの事実が反映できない
・取得価格により計上されており、時価が反映されていない
・時系列の比較分析を行った場合、有形固定資産については原因分析が難しい
⑤現状の中で分析を深める
i 資産と負債の詳細内容を可能な限り押さえる
 ・例えば、「投資及び出資金」であれば、どのような団体に出資しているかを押さえる
 ・有形固定資産については、公有財産台帳から押さえる
ii 詳細について効率性・金額の妥当性を検討する
 ・例えば、投資先であれば破綻していないか
 ・普通財産の土地であれば時価との乖離について
iii さらに事業別に把握できれば、更なる活用が可能

概要 (25日)

地方議員・議会事務局のための危機管理講座

市町村アカデミー客員教授 大塚 康男 氏

1 住民訴訟

①議員と訴訟:住民訴訟は起こしやすい
・損害賠償請求額に応じた印紙が必要ない(13,000円でよい)
・勝訴した場合の弁護士費用も相手側から取れる(民事訴訟では不可)
・原告要件は、住民であることのみ
・現職でなくても訴えられる(被告が死亡しても相続人が訴えられる)
②住民訴訟とは
・H14の自治法改正前:私人として(市長や議員ではなく)訴えられる
例:B議員はA市に損害賠償を支払え
・改正後は義務づけ訴訟:執行機関に対し、市長や議員に対する損害賠償請求を求める
③議員が関係するのは4号請求、その場合の被告
i 当該職員
・支出命令の権限を本来的に有する者(決済権者・長)
・上記の者から権限を委任された者(政務調査費では事務局長や庶務課長)
ii 相手方:利益を得た者(議員が該当)

2 兼業の禁止

①議員は営利事業等を営むことはできる。この点において、公務員は公務員法上、営利企業の従事制限が規定されており、制限されている
②請負とは
・給食、清掃など(委任や委託も含む)の売上げが、当該企業の総売上の50%以上を占める場合(個人経営の場合は1%でも不可)
・一度きりの契約(土地売買等)は問題ない
・自治体と請負契約のある企業の意思決定機関(取締役等)であってはならない(平社員なら問題ない)
・NPOは該当するが指定管理者は非該当(指定管理者は契約でなく行政処分であるという総務省見解)

3 懲罰

①懲罰動議の提出者
・一般の議員:定数の1/8以上で発議できる
・侮辱を受けた議員:一人でも可能
・議長:正当な理由(病気、災害、拘束など)なく欠席した議員の懲罰のみで、他の事項は規則で定めても不可
②懲罰の限界
・人的限界:現職議員のみ
・場所的限界:本会議場と委員会室での言動のみ
・時間的限界:本会議と委員会の開会中のみ(閉会中審査の場合もOK)
・事項的限界:議会の秩序を乱した者に対して行われる
③懲罰の種類
・公開議場における戒告:議長が戒告文を朗読
・公開議場における陳謝:当該議員が陳謝文を朗読
・一定期間の出席停止:当該会期以内に限る
・除名
④懲罰の手続き:問題の言動から3日以内

4 議員立法

①条例制定権の限界
i 法的限界(法令に違反しない範囲):違反すれば無効
・法令とは、法律、政令、省令、議院規則、裁判所規則等
・法段階説:憲法、条約、法律、命令(政令・省令)、規則(議院・裁判所)、条例、規則(自治体)の順で高位置に違反する場合は無効
ii 事項別限界:条例内容は自治事務+法定受託事務の範囲
iii 条例の内容
・福祉、サービス内容:法令との抵触はない
・規制内容:法令との抵触が問題
可能なもの:国の未規制領域、法令と同一事項について異なる目的の規制、法令と同一事項について国が対象外としている事項(横だし)、法令と同一事項(ナショナルミニマムを定めた場合のみ)について法令よりも高い規制(上乗せ)
②条例の罰則
・2年以下の懲役、禁固又は100万円以下の罰金等:裁判が必要
・5万円以下の過料:裁判にかけなくてよい(その場で取れる)
・罰金と過料
 罰金(科料):刑事罰
 過料:行政罰、秩序罰
③条例の提案者
・長、議員(1/12の賛成)
・18年の自治法改正により、委員会(常任・特別・議運)に提案権が付与された
④提案できる議案の種類
i 長の専属→部設置条例
ii 議員専属→委員会条例
iii 議員提案にふさわしいもの
・自治基本条例、住民参加条例等の自治に基本ルールを定めるもの
・環境美化条例、防犯条例等の住民生活に密着している条例
・宣言条例

5 再議

①再議とは、議会の議決に対して長が違法等と認めて異議を述べ再考を求める行為
②一般的拒否権
i 条例の制定・改廃、予算について長に異議がある時は、議長から送付を受けた日から10日以内に理由を付して再議に付すことができる
ii 再議の対象は、条例の制定・改廃、予算に限定
iii 再議の対象
・議員提案の条例
・長の提出した条例が修正された場合
・長の提出した予算が修正された場合
・否決は非該当
iv 再議の時期は条例、予算の執行前でなければならない
v 再議の効果
・前の議決は無効
・2/3で再議決→決定
・2/3で再議決できない→廃案

6 一事不再議

①一事不再議とは、同一議会中に一度議決された事件について再度議決しないこと(絶対的な原則ではない)
②「一事」の認定は、議長が、または議長が議会運営委員会に諮問して決定
③認定基準
・同一会議中であること
・同一内容であること
・撤回の場合は、再度提出は可能
・形式(条例、予算、契約等)が異なれば提出は可能
・一事不再議の原則に違反した場合の効力は、当然無効ではなく、違法議決として再議に付すこととなる
④一時不再議の原則の例外
・事情変更の原則
・長の再議
・委員会への再付託

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