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PARC自由学校 2007年講座 を受講

PARC自由学校 2007年講座 を受講

日時平成19年9月6日
場所PARC自由学校(東京都)
用件PARC自由学校 2007年講座 を受講

概要

ソーシャル・ファイナンス ~社会的なプロジェクトを支える金融の仕組み~

(株)農林中金総合研究所 重頭 ユカリ 氏

1 お金の流れを変えるための取り組み

  • お金はいったん自分の手を離れると、どこにいってしまうのか分からない → グローバル化が進展しているため、銀行に預けたお金が武器の開発を行う企業に融資されている場合もある
  • 様々な取り組みがある:ソーシャルバンク、SRI(社会的責任投資)、金融NPO、地域通貨など

2 ドーピン税・国際連帯税

①ドーピン税
  • ドーピン税とは、外国為替市場での取引にごく低率の課税を行う
  • ある通貨が攻撃された場合は、そのような取引による利益獲得を妨げるレベルまで税率を上げる → 金融市場の安定化
  • 集めた税金は最貧国への援助に使う
  • カナダ、イギリス、ベルギーなどの国会で導入を促す決議

②国際連帯税
  • 国際連帯税とは、貧困や飢餓を減らし、全ての子供に初等教育を普及させ、HIVやAIDSを減少させるための新しい資金源。当面、航空券に税をかけ、その税収をHIVやAIDS問題等に充てるというもの
  • フランスで導入済み

3 ソーシャル・ファイナンス

①ソーシャル・ファイナンスとは
  • 金融面での利益と同様に社会的な利益や社会的配当を求める組織による資金提供
  • 連帯精神を持つ貯蓄者と社会的精神を持つ企業家を仲介するシステム

②預金者の意識
  • 店舗統廃合やサービス削減など、銀行の収益本位の姿勢に対する不満
  • 自分のお金がどのように使われているのかを知りたい欲求

③融資の受け手側
  • 社会的企業が発展している

4 事例

(1)イタリア 倫理銀行
①現状
  • 職員数98名
  • 支店は9都市だが、預金は提携先の他の銀行からでも預け入れ可能
  • 個人貸付を除くフルバンキングサービス(クレジットカード引落としも可)

②預金
  • 預金者は貸出しを行う4分野(社会的協同、文化・市民社会、国際的協同、環境)から好きな分野を指定して預ける

③融資の審査 
  • 融資対象は非営利組織のみ
  • 審査は社会的審査を行い、次に経済的な審査を行う
  • 社会的審査項目:環境への影響、労働環境、人種差別、民主的運営、情報開示、地域貢献など
  • 地域組合員が社会的審査をチェックする

(2)オランダ トリオドス銀行
①現状
  • ベルギー、イギリス、スペインに支店開設
  • 店舗はなく、郵便やインターネットでのオペレーション
  • 目標:社会、環境、文化的な付加価値の達成を目的とする事業やプロジェクトに貢献

②特色ある預金
  • チキン&エッグ口座:1000ユーロを5年間預金、預金者は金利の代わりに毎月6つの有機卵を受け取り、農場のオープンデイに招待される
  • フェアトレード口座:最低500ポンドを預金、フェアトレード組織のみに融資。口座の年間平均残高の0.25%をトリオドス銀行からフェアトレード財団に寄付

③融資
  • プロジェクト向けと企業向け
  • 対象分野:自然と環境、社会的ビジネス、文化と社会、南北問題

5 おわりに

①ソーシャル・ファイナンスの特徴
  • 預金者が金利の一部を寄付する仕組みがある
  • 融資分野を限定(社会、環境、文化など)
  • 融資先の選別方法はポジティブ・スクリーニング
  • 透明性を重視し融資情報を公開
  • 広告宣伝にお金をかけず、口コミで利用者を集める

②課題
  • 社会的な目的の追求と経済性の舵取り:参加や透明性を維持できるか
  • お金に意思を持たせ続けることの困難さ:時間がたち、規模が大きくなるにつれ、当事者意識が薄れる傾向がみられる